北海道大学 授業評価

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教官後藤康文
教科(講座)伊勢物語を読む
投稿者
投稿日2021年09月18日
評価やや仏
テスト
レポートあり
出席なし
コメント先生がご専門にされている伊勢物語の章段を読んでいき、その中で各章段において解釈に諸説ある表現をピックアップして先生の解釈を聞く、という講義(大体は前半の問題提示編と解釈を示す後半の解決編の2回で章段1つを読み、解決編では参考資料として先生の論文を読んでいく)。各回はオムニバスだが評価対象は授業で取り上げた表現を一つ選んでその表現を自分なりに解釈する最終レポートだけであり、極論すれば初回に出てきた表現を授業直後に2000字くらいのレポートにちゃんとまとめればあとは講義に一切出なくても2単位分のAなりA+なりがくる、という単位なので楽単だと言われているらしい。解釈とはいっても専門的な知識は必要なく、出てきた文を論理的に読み解くだけで筆者はAがもらえた(もちろん講義で取り上げた解釈を批判する解釈でも自分でしっかり考えた内容なら高評価は与える、という先生からの言及もあった)。 ただ、後藤先生は伊勢物語の研究においてかなり高名なようで、単純に古文の授業として講義内容が面白い(声はちょっと眠いが、質問にも丁寧に答えてくれるいい先生だ)。高校の古文の授業にありがちな、勝手な想像や文法的に無理のある解釈は「人文『科学』をやる人間の仕事じゃないでしょう」とバッサリ切りつつも、文章内容に類似した他の文章の事例などを根拠として豊富に用いた上でテクストに書かれていない事実関係の空白を大胆な解釈で埋める先生の話は、文章の意味理解における「解釈の幅」の面白さを感じることができるだけでなく人文科学において「科学的」に考えるとはどういうことか理解するきっかけにもなると筆者は感じた。 本文に忠実に従い合理的な範囲で解釈を加えながら「伊勢物語の最大の特徴は類書に比べ少ない言葉でその情緒を表現したことであり、解釈の幅が広いことこそが物語の大きな魅力だ」「作者が生きており文章の唯一絶対の正しい解釈が存在している現代の文章とは違い、作者がもうこの世にいない古典文学においては解釈の幅の中で自由に想像の翼を広げることができる」などと古典文学の楽しみを語る先生の講義は、「文系科目なんて結局はフィーリングだ」「科学的に考えれば、いつでも答えは一つに決まる」などと思いこむ理系の学生にこそ強くお勧めしたい。
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