教官 | 他何 |
教科(講座) | 蟻塚 |
投稿者 | |
投稿日 | 2021年02月12日 |
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コメント | ゴミが落ちている。最初そう思った。窓枠のサッシに黒い蟻が這っていた。
泥を塗りたくるよう
に早々と変わって行く風景を何と無しに眺めていた。
目的地である、合山まで後2時間と言ったところか。
私は隣に座っている少年を横目で見る。
親が同伴でないところを見ると、この辺りに住んでいる子供なのだろう。私はマスクの下で微かに笑みを浮かべる。
矢継ぎ早に変わる窓の外に目を取られていると、バスが煉瓦造りのトンネルに入った。この時分に煉瓦造りとは珍しい。
しかし、あまり長くないトンネルのようで、バス内に明るさが戻ってくるのは、そう長くなかった。
ちょうど、トンネルを出たところであろうか。バス内の狭い通路が真っ黒に染まっていた。先程のトンネルの暗闇とは比べほどにないほどであった。
そして、その底の見えない闇は重力異常を起こしたように、バスを内側から吸い込むようにして壊していく。
「屠殺場みたい」
そう思ったときには遅かった。
後日、数名の行方不明者が煉瓦トンネル内に白骨化遺体の状態で見つかった。そして、不思議なことに遺体の周りには、幾多の蟻の死体の山が積み上がっていたという。 |
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