教官 | ルルルンるんるん |
教科(講座) | 消えた陽光 |
投稿者 | |
投稿日 | 2021年02月09日 |
評価 | |
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レポート | |
出席 | |
コメント | 俺の部屋には太陽の光が届かない。
目の前に馬鹿でかい建物が建ててあるわけでも、窓が北側につけ置きしてあるわけでもない。俺は、マンションと契約する時、確かに日当たり良好の文字を見た。では何故届かないかって?ベランダに夥しいほどの靴が置かれてるからだ、しかも俺にしか見えないと来た。
あれは、俺があのマンションに入室して1ヶ月ぐらいの時だ。目を醒めると暗いんだよ。夜中みたいに。時計を確認すると6時半だ。もう日が昇る頃だ。なのに何でこんな暗いんだ。カーテンは閉め切ってあったが、なんていうかこれは、太陽が消えたんじゃないかってレベルだ。
カーテンを開け、窓を見る。俺は息を呑む。物すげえ数の靴がある。しかも奇妙なことに、ちゃんとみんな、右足と左足が揃ってるんだよ。俺は怖くなって、今日は会社に行くのをやめたんだ。10時に家主に電話する。ここが本当は事故物件なんじゃないかって。でも、ここにそんな謂れは無いみたいだ。今まで、ここに住んでいた人が苦情を申し立てたこともないみたいだ。
俺は引っ越しを考えた。いい物件だったのだが、仕方がない。次の日、休日ということもあり、俺は新しい物件を探しに不動産に向かった。
空いている物件はなく、一ヶ月近く待たなければいけないらしい。俺は、焦った。あんなところに一ヶ月も住んだら俺の気が狂っちまう。しかし、事情を説明しようにも、それこそ、気狂いだと思われてしまいかねない。
一ヶ月だ、一ヶ月の辛抱だ。何、陽光が見えないだけで、俺は何をそんなに焦っているんだ。しかも、外にさえ出れば、俺は太陽を拝めることが出来るんだ。
2週間ぐらい経ったところだろうか。人間とは恐ろしいもので、ベランダに見える大量の靴を見ても、特に何も思わなくなった。俺は狂っちまったのか。でも、精神科医に行くようなことにならなくて良かったな。そう思い、男はベッドから血を起こす。眼鏡をかけ、床に足を落とす。何か、奇妙な感触があった。
まさか!
床には大量の靴が置いてあった。男女様々な靴。運動靴、作業靴、ハイヒール、ブーツ、サンダル。確かな感触であった。幻想とかそういうのではなかった。
もう限界だ!もう懲り懲りだ!こんなの続けてたら本当に俺は!
俺は、その日も会社を休み、不動産に向かった。今すぐ!今すぐ!紹介してくれ!どこでもいい!どんな条件でもいい!お願いだ!頼むから!
「…では、ここはどうでしょう」
今、俺は新しい物件に住んでいる。ここは日当たり良好だ。特に問題もなく住んでいる。コンビニやスーパーマーケットが近くで生活する分には困らない。娯楽施設が近くにないのが残念だが。
それに、俺が住んでいる部屋のフロアには誰も住んでいないようだ。どころが俺の周りの部屋には誰も入居していないようだ。騒音が気にならないのは好都合だ。後、ベランダから下を見下ろすと墓地が見える。夜中になるとそこから、俺の名前が呼ばれている気がする。しかし、前の物件に比べたらそんなもの、幻聴に過ぎないだろう。 |
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