山形大学 授業評価

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教官あの日見た花の名前は確かうーんと何だっけ?
教科(講座)亡霊
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投稿日2021年02月09日
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コメント「砂浜からね、お空に向かってね、すーって飛んでくの」 「鳥さん?」 「違う」 「亀さん?」 「違う!亀さんは飛ばないよ」 「じゃあ何なのよ」 今ならあれが何なのか分かる。多分、あれは「幽霊」だ。  お盆の間、私は幽霊に会う。片手がなかったり、片足がなかったり、普通の人だったり、軍服姿だったり。お盆の最初の日、幽霊は空からやってくる。安倍晴明が使う式神みたいに飛んできて、砂浜に着陸する。そのまま、いろんな家に帰っていく。そして、お盆の最後の日に、空に向かって飛んでいく。そんな感じで、私はお盆という期間限定では有るが、幽霊を見ることができる。この能力で得したことは特にないけど、一つだけ。一つだけ不思議な体験をしたことがある。まあ、幽霊を見れること自体不思議な体験なのだけれど。  あれは、中学2年生、私が陸上部に入部していた頃。私は9月に控えている大会のため、毎日川沿いの散歩コースを夜に走っていた。日中に走ることもできない訳ではないが、些か憚られた。等間隔に電灯はしっかりと取り付けられていて、両親も、そこなら走っていいよと、了承を得ている。こんな時、東京住まいで本当に良かったと心から思う。  折り返し地点の5キロメートルに達した。ちょっとベンチで休もう。私はミニバッグから水筒を取り出し、耳を澄ます。鈴虫の声、静かな川のせせらぎ、名前も知らない虫の鳴き声、車の走行音が川を伝って聞こえてくる。この瞬間が私は好きだ。と言うか、このために走っていると言っても過言ではない。と、水筒の中身を半分ほど飲んだところ、「助けて!助けて!」と言う少女とも少年とも取れる悲痛な叫びが聞こえた。私は声のする方に全速力で駆け寄る。川岸の水草の中、何かが蠢いてる。黒い影が見える。バックからスマホを取り出し、ライト機能を使い、照らしてみた。すると、そこには少年の姿があった。私は川岸のまで落ちるようにして、滑っていく。しかし、ある異変に気づく。少年の顔は踏み潰したトマトのようにぐちゃぐちゃだった。さらに、右手首から先は失われている。私はこの風貌の人を何回も見たことがある。しかも期間限定。幽霊だ。直感的にわかる。いつから幽霊が見えたのかはよく覚えていない。でも最初にあったのは近所のスーパーだった。女子トイレの方をずっと睨みつけるようにして佇んでる20代ぐらいの女性がいたのだ。母親に聞いても、「そんなの見えないわよ、行くよ、由香」と手を引かれてことがある。でも、忘れもしない。その女性の首元に黝いロープ痕があったことを。  幽霊についている傷は生前亡くなる前についた傷をそのまま遺しているみたいだ。その傷痕は上手く言えないけど、生身の人間についている傷と明らかに違う。  だから、私はすぐにわかった。長年の勘って奴だ。でも、この少年は助けを求めている。だとしたら助けない道理はない。よく見ると、少年は溺れているわけではなかった。ここは浅瀬である。溺れるわけがない。よく見ると少年は何かに喰われていた。鰐のように思えた。私はライトをその何かに照らす。女性器であった。私の身長を悠に超えるだろう女性器が少年を喰らっていた。私は声にならない叫びをあげる。走り出そうとしたその瞬間、さっきまで走っていた散歩道を巨大な男性器がこちらに向かってきていた。男性器には手があり、足があり、胴体以外は普通の人間のようであった。男性器は手を振り、全力疾走してこちらに向かっている。そして、私の真後ろまで来て、川へとその勢いのまま、飛び込みをした。すると、女性器は少年を喰らうのをやめ、男性器が飛び込んだ地点へと向かう。2人は川の中で出会い、そのまま、接合し合っていた。これまで見た、どの生物よりも直接的な交尾であった。私は泣きながら逃げた。  今、私は高校一年生、都内の進学校に進学した。あれ以来、あの化け物を見たことはない。でも、幽霊を見ることはある。そして、私にあの日以来、異変が起きた。それはお盆じゃない日でも幽霊が見えるようになったのだ。何でこうなったかは分からない。でも、確かに考えてみたら、お盆の日だけ見えて、他の日は見えないっていうのは少し不合理な気がする。だから、私はこれでもいいって思ってる。
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