小樽商科大学 授業評価

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教官通りすがりの経済学好き
教科(講座)高校生に経済学の魅力を伝えたい
投稿者通りすがりの経済学好き
投稿日2025年01月09日
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コメント学科選択時、経済学科はその人気が最下位、その理由。それは、おそらくイメージが湧きにくいことと、バリバリ数学を使うからである。だが、逆に言えば、そのイメージを掴み、数学を使うことに怯えさえしなければ(数学好きなら誰しも?と言うのも、高校の無味乾燥な数学の数々が、日本、さらには世界を記述する言葉として生き生きとした意味を持ち始めるからだ)、人気学科になって然るべきであると筆者は考える。その訳を今から話そう。まず、経済学は「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」、それから「計量経済学(エコノメトリクス)」に分かれる(それゆえ、この3分野はミクロ、マクロ、エコノメと呼ばれる)。まずはミクロ経済学から話してゆくと、ミクロ経済学は、完全競争という理想的な市場の状態をまず仮定して、そこからモデルを拡張してゆく、非常に興味深い分野である。数式はもちろん使うが、簡単な微分と1次・2次方程式だと思えば良い。不定方程式が制約式となって、無差別曲線と接点を持つところで消費者、つまり普段の我々が消費をする際の最適解が導かれる様を視覚的イメージで攻めるのも小気味が良い。さらにいえば、それらは市場の普遍性と、環境の凸性(いまはわからなくとも良い)によって、見えざる手によって社会的に最適な、より正確に言えばパレード効率的な点に導かれるのである。しかし、それは必ずしも公平性とは結びつかず、しばしばトレードオフの関係に直面する。こうした哲学的要素も、経済学の魅力の一つである。企業法学科は特にそうであろうが、思想的な面が強く、各々の学派によって意見の対立が生まれるのがその旨みであろう。しかし、経済学も根底には哲学的要素が含まれており、主に功利主義的な面から語られることが多いのである。それゆえ、転売ヤーは法学的・感情的にはダメとされても、実際には社会の厚生を上げているのではないか?などの点について考察できる。現状の制度を法学のロジックと、時には感情的ロジックでディベートするのは法学のやり方であろうが、経済学のロジックは数学を使うがゆえにそれとは一線を画する、ある種の非常識的な結論を、上手く常識を手放すことによって、数式で論理的に導き出すことができる。どうだろう、面白くはないだろうか?数式を用いて世界の遷移の軌跡・奇跡を記述する。これほど興味そそることはないだろう(物理学に近いイメージを筆者は持っている。) 続いて、マクロ経済学である。筆者はミクロ経済学の方が好きなのであるが、マクロ経済学の方が使う数式は一般に簡単である(ただし、初級・中級に限る)。マクロ経済学では、ミクロな単位の単なる集計では得られない、ある種の創発的事実を解明することになる。有名なのはIS-LM分析やAD-AS分析であろうか。他にも詳しくある(フィッシャーの交換方程式やケンブリッジ方程式)のだが、初級のうちはこれらを押さえれば十分であろう(YouTubeに解説動画が割と豊富にあるので、ぜひ探してみてほしい)。マクロ経済学の方が、数式の集合体であるミクロ経済学よりも、生活実感に基づいた「ザ・経済」という感じがするであろう。地域経済、日本経済、さらには世界経済の様子を伺い知れるからだ。だがしかし、数式を使うともっと面白い。高校の数列で扱ったような漸化式が、差分方程式と名前を変えて位相図と結びつき社会の遷移を教えてくれるなど、数学好きにはたまらないのではないか?微分方程式も活躍するし、線形代数だって活躍する。面白いぞ〜。IS-LMモデルも行列表示できたりする。割と高度だけど。社会情報学科だって数学は使うだろうけど、経済学ほど生き生きとしてはいないと思う。どちらかと言うと、プログラムコードの基礎になっている程度なんじゃないだろうか?それか、地域経済圏の分析など、結局は経済学に似たようなことをやっているとかね。それと、マクロ経済学の標準的内容を習得することのメリット、効用の一つは、MMTなどの俗説や陰謀論に騙されなくなることであろう。ケインズ・サーカスに所属し、かつてノーベル経済学賞の候補に上がる事絶え間なかった女性経済学者、我らがジョーン・ロビンソンの言葉を引用しよう。「経済学を学ぶのは、エコノミスト(経済評論家)に騙されないためです。」日本経済は色々な角度から、色々な言説が飛び交っているが、標準的なマクロ経済学はそれらの認識をバッサリ切って削ぎ落とし、真理に近づく最適解を教えてくれる(それゆえ上級は恐ろしく難しいのだが…)。これはミクロ経済学も同じ事であるが、少々事情が異なるため、あえて言及しておいた。 続いて計量経済学。こちらは理論屋学生の私からすれば専門外だが、確かに言えることは、データを用いて実証的な研究を行う事で、現実から乖離した言説を排除し、確かな診断を社会に下すことができることではないだろうか。これはいわゆる、データサイエンスである。今流行りだよね。高校生でも興味を持てて、イメージを持ちやすいとしたら、計量経済学な気がする。私は専門書を2冊パラパラ読んだ程度でしかないので詳しいことは説明する能力自体が無いのだが、データを用いて社会を診断する、それも身近な事柄からデータを収集して提示してくれるというのは大いに魅力的ではないだろうか。エコノメの魅力はまさにデータ分析にあると思われる。ミクロ・マクロと同じく、しかし理論だけではないデータという異なったアプローチから、地域から日本、世界まで分析可能だろう。 どうだろう。以上、各々簡潔ではあるが長文になってしまったわけですが、高校生諸君が経済学のイメージとそれに対する興味を持てたら幸いである。
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